福祉・介護業界を知ろう!ビジネス成功のためには業界研究が必須
数ある業界の中でも福祉・介護業界は、今後の動向が注目を集めているもののひとつです。理由はこれからも進んでいく日本の少子高齢化で、産業規模の拡大によるビジネスチャンスと捉える人もいますし、ケア体制の崩壊を危惧する声も聞かれます。
どちらの観点でこの業界をみるにしても研究は欠かせません。
もくじ
現在の超高齢社会と将来の高齢化予測
日本では20世紀から少子高齢化問題が議論されてきましたが、多くの人がすでに超高齢社会となったことを知っています。具体的に超高齢社会となったのは2007年のことで、それは全人口に占める65歳以上の割合が21パーセントを超えたためです。
ご存知のかたも多いと思いますが、全人口に占める65歳以上の割合が7パーセント以上14パーセント未満で高齢化社会、14パーセント以上21パーセント未満で高齢社会、21パーセントを超えると超高齢社会と定義されています。
高齢者の割合が今後も上昇を続けるのは必至で、人口問題研究所の報告によれば2050年には高齢者の割合は4割ちかくになるそうです。ちなみに減少を続けている日本の人口が1億を切ると予想されているのも、2050年頃です。
ケアを必要とする高齢者が増加するにもかかわらず、労働者人口が減少していきます。ですから各家庭で介護をする形態ではとてもカバーできるわけはなく、集団で効率的なケアをしなければ社会問題が深刻化することは避けられないといわれています。
内閣府の調査からみる高齢者の経済状況
平成28年に内閣府が行った、高齢者の経済・生活環境に関する調査結果という報告によって、60歳以上の高齢者の経済状況が明らかになっています。同居者のいる人が85パーセントを占めていて、7割の人が配偶者と暮らしています。また42パーセントは子供と同居中です。
収入のある仕事をしている人は全体の3分の1で、60歳以上65歳未満の男性では4分の3が仕事をしています。どの年代でも女性より男性の方が仕事を持っている割合が高いのですが、75歳以上になっても男女ともに1割強の人が仕事による収入があります。
1カ月にあたるの平均収入が10万円を切る人は2割ほど、10万円以上20万円未満が3割強、20万円以上が半分弱となっています。家計に対する心配の有無を訊く質問に対しては、心配あると答えた人が35パーセントいましたが、著しく心配と答えた人はそのうち4分の1ほどでした。
住宅は賃貸よりも持ち家の方が多く、一戸建ての持ち家が8割強です。集合住宅の持ち家が3パーセント、賃貸住宅は12パーセントほどです。持ち家に住んでいる高齢者の多くが、手すりの設置や床の段差解消が必要だと考えているようです。
高齢者の健康問題と介護の必要性
65歳以上75歳未満の人を前期高齢者と呼び、75歳以上の人を後期高齢者と呼びます。前者は、お年寄りといっても活動的で、趣味や仕事に精を出している人が少なくありません。後者になると持病を持っていない人は少なく、要介護認定を受ける人も多くいます。
同認定で自立や要支援にとどまっている人が健康とすると、現在の健康寿命は男性が72歳、女性が75歳となっています。ですから75歳以上で持病のない人は、とりわけ健康な人といっていいでしょう。
65歳以上の人の主な死亡原因は、まず悪性新生物や心疾患、脳血管疾患があります。ほかには肺炎や不慮の事故、老衰もあげられます。上記の疾病はすべて一命をとりとめたとしても、入院や外来での受療が必要となるものです。
くわえて後遺症が残るため自力で生活をするのが難しく、家族やプロフェッショナルによる介護が欠かせなくなります。たとえば脳血管疾患の多くは後遺症が残り、半身不随や言語障害が残るため自力歩行が困難であったり、言語を使ってコミュニケーションを取ることができなかったりします。
介護や福祉もビジネスで、注目されているのは在宅サービス
日本社会の高齢化はますます進み、介護ビジネスの需要が伸びていくことはここまで説明してきたとおりです。かつてはお年寄りのケアは家族と行政の仕事、という考え方が主流だったため社会制度もそのようになっていました。
しかし現在は介護保険制度が導入されたことにより、利用者と事業者の契約に基づくサービスに形を変えました。 介護職に就く人は困っている人を助けることに喜びを感じる人が多く、ビジネスという言葉に抵抗を感じている人がまだいるようです。
そうであっても食べる人の気持を考えて料理人が腕を振るうように、ケアされるお年寄りのことを考えてサービスを提供するビジネスなのです。 時代とともに変容するケアサービスの中でも注目を集めているのが、在宅サービスです。
夜は自宅で休む人が利用するタイプのサービスで、訪問看護や訪問リハビリ、デイサービスなどが含まれます。近年では大手の企業がフランチャイズ展開して提供するサービスも増えてきています。
ケアを受けているとき以外は家族と過ごせるので、環境の変化から受けるストレスが少ないことがメリットです。さらに費用が少なくてすむ点も魅力的です。
訪問マッサージは在宅サービスのひとつ
在宅サービスのひとつに訪問マッサージがあります。施術しているのはおもにあん摩マッサージ指圧師の国家資格を持ったプロフェッショナルで、体の機能回復や慰安を目的としたマッサージを行います。
具体的には緊張した筋肉をもみほぐすことで、関節の可動域を広げたり、ツボを指圧して内臓の機能を向上させたりすることなどです。 筋肉は使いすぎても硬くなりますし、動かさなすぎても硬くなります。
硬くなって凝ると痛みを生じて辛いですが、関節の可動域が狭くなると日常生活の動作をするときに問題が発生します。ひどくなると自力で歩けなくなったり、ベッドから起き上がれなくなったりします。
体のツボは古代中国で発見されたもので、正式には経穴と呼ばれます。内臓の機能に影響を与えるポイントが体のはなれたところにあり、上手に刺激を与えると好影響を与えます。ただし間違ったやり方をするとマイナスの影響を与えるのでプロフェッショナルの施術を受けるのがいいでしょう。
他にも脳血管疾患による麻痺や拘縮などの改善にも、マッサージの有効性が報告されています。くわえて体液循環の改善効果もあるので、免疫力向上が期待できます。
訪問マッサージは、ステーションからあん摩マッサージ指圧師を派遣するかたちになります。ですから異なるエリアで営業するステーションで、フランチャイズ経営するのに向いたサービスです。
在宅サービスをするならば専門家をチェック
訪問マッサージをはじめとする在宅サービスのフランチャイズを進めるならば、専門性の高い人材の確保が大切です。福祉関連の資格としては社会福祉士や介護福祉士が有名で、独占的な資格ではありませんが一定の力量を持っていることは確かですから安心して仕事を任せられます。
他には先ほど触れたあん摩マッサージ指圧師がありますし、はり師ときゅう師という東洋医学ベースの医療資格があります。どちらの資格の所有者も筋肉を緩めたり、ツボを刺激するなどして高齢者の体調を改善することが可能です。お年寄り向けに限らず訪問タイプのサービスをしている人も多いので、鍼灸のサービスもフランチャイズで提供するならばチェックしておくべき資格です。
くわえて訪問リハビリをするならば、理学療法士と作業療法士は確保すべき人材です。理学療法士は日常動作に問題がある人のリハビリ指導の専門家です。動作の指導をするだけでなく、回復プログラムを組むこともします。作業療法士はうつ病や拒食症など精神的な問題を抱える人もカバーしていて、広くリハビリ現場で仕事をしています。
少子高齢化の進行は避けることができそうにありませんから、ケア体制の効率化がのぞまれます。また在宅サービスは今後も拡大していくと考えられているので、訪問マッサージなどにはビジネスチャンスがあります。不足が懸念される専門家の確保について、十分な検討をすることが欠かせません。